ルーマニアから歩いてウクライナに行った話

ルーマニアを旅行していた時の話です。

 

ルーマニアの第3都市クルジュ=ナポカを拠点に、汚染水に沈んだジャマナという村を見に行ったり、

nrtshg.hatenablog.com

 

地下120mにある遊園地で手漕ぎボートや観覧車に乗ったりしてました。

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昔は岩塩坑だった場所。すごくSFチックな雰囲気です。

 

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内部はひんやりとしていて肌寒いです。

 

 

そんなこんなでクルジュ=ナポカを満喫し、次はウクライナに行く予定でした。

ここでひとつ問題発生。

クルジュ=ナポカ、結構大きい都市のくせにウクライナに直で行ける電車 or バスがなかったのです。

インターネットで「ルーマニアからウクライナ」みたいな感じで旅行記を漁ってみましたが、出てくるのは首都ブカレストから行ったという情報のみ。

しかし僕はクルジュ=ナポカに来るまでにブカレストから約10時間オンボロ電車に揺られるという経験をしていて、ふつーにしんどかったのであれを繰り返すのは避けたいところ。

 

ルーマニアの電車はめちゃくちゃ遅いです。遅いものだと時速17km、それ以外でも大体時速30km~50kmくらいで走ってるらしいです。去年書かれた下の記事では、「ルーマニアの電車、スクーターより遅いやんけ!」と評されてます。

https://www.romania-insider.com/freight-trains-slow-romania

 

そういう訳で、なんとしてもブカレストに戻ることなくウクライナに行けるルートを考えつかなければいけません。電車もない、バスもない、となると・・・・・

 

 

 

そう、徒歩です。

 

 

ここでの問題はルーマニアからウクライナへ国境を超えて運行する公共交通手段がないこと。ルーマニア国内・ウクライナ国内それぞれの移動は、どれだけ田舎でもバスの1本くらいは走ってるので問題なさそうです。つまりネックとなっているのは国境超えのみ。

 

ここで地図を見てみます。

国境に最も近くてそこそこ大きそうなSighetu Marmatiei (シゲトゥマルマツィエイ)という町を見つけました。クルジュ=ナポカからもバスが出ているので、ここまでは辿り着けそうです。

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次に国境を歩いて超えれそうかどうか。

ルーマニアウクライナを隔てる川がありますが、そこに橋がかかっていて、その先の町に駅があるのを発見。駅名は全く読めないですが、とりあえずここから電車で大きい都市に移動できそうです。

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駅についているレビューを見てみると、"End of the Ukrainian Railways"と書いてあります。最果ての町にある辺鄙な駅ですが、僕にとってはここが始まりです。

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こちらのレビューは見なかったことにします。

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国境沿いの町までバスで行けること、国境を歩いて超えれそうなこと、そこから電車で移動できそうなこと、必要な情報は全て出揃いました。

 

思いついたらすぐ出発です。宿の予約もしないまま(これのせいで後にめちゃくちゃ後悔しました)バスに乗り、ルーマニア最果ての町へ向かいます。

 

こういう旅行記とかには載っていないルートを自分で開拓する瞬間が、すごく「旅」って感じがして好きです。

 

 

夕方頃にSighetu Marmatieiに到着。まずは早急に宿を見つけなくてはいけません。

そんな大きい町ではないし、宿が満室になるなんてことはないだろう、と余裕をかましていましたが、これが大きな間違いでした。

 

宿から宿へと練り歩き、空室がないかを尋ねながら歩き続けるうちにあたりはすっかり暗くなりました。もう野宿か夜通し歩き続けるしかないか・・・と、ほぼ諦めていたところ、なんと奇跡的に空室のある宿を見つけました。

チェックインしたのは夜の10時。ご飯も食べずに宿を探していたので、この宿に巡り合えたときの安堵感はハンパなかったです。

この宿の存在には本当に救われたので記事内で紹介したいんですが、写真も撮ってないしホテルの名前も場所も忘れてしまいました。

 

 

翌朝。

 

ウクライナ側の電車の時刻表が分からないので、とりあえず朝早いうちに出発します。国境となっている橋に到着すると、地元の人が何人か徒歩でパスポートコントロールを通過していました。しかしやはり「ルーマニアの辺境の町で徒歩で国境を超えるアジア人旅行者」は珍しいらしく、奇異の視線を感じます。

 

日本パスポートのパワーでパスポートコントロールは問題なく通過します。

 

そしていよいよウクライナ入国です。

この橋を渡れば、キリル文字が溢れる異国の地です。徒歩で国境を超える高揚感たるや。

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そのまま少し歩いたらウクライナ側の町、Solotvynoに到着。

とりあえずATMでウクライナの通貨フリヴニャを入手し、駅に向かいます。

 

Google Mapのレビューに書いてあった通り、ボロボロで何もない駅ですが、一応駅員のおばちゃんがいました。しかし英語を話せないらしく何を言ってるか分かりません。地図を見せながら僕が行きたいLvivという町を指さします。すると紙に電車がくる時間を書いてくれました。

 

あんまり覚えてませんが、17:00過ぎくらい発で朝5時くらい着の夜行電車だった気がします。電車の時間まで、お昼を食べたりカフェでぼーっとして時間を潰します。

 

おばちゃんが紙に書いてくれた時刻に駅に行くと、「マジで?」と言いたくなるくらいボロい電車が止まってました。

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恐らく社会主義の時代からずっと走ってるであろう電車。

当時はクソ暑い8月ですが、もちろん冷房とかもついていません。

 

「マジか・・・」と思っているうちに電車は走り出します。

 

スーパーで買っておいた晩御飯をもそもそと食べて、ぼーっとしていたら夜になりました。

僕のベッドは2段あるうちの上段でした。

寝台列車に乗るの自体初めてだったんですけど、上段で寝てると寝返りで下に落ちそうでめっちゃ怖くないですか?

狭いし固いし落ちそうで怖いしで、ぜんぜん寝る気になりませんでした。

そして車内が死ぬほど暑い。

 

 

そんなこんなで、涼しい空気を求めて空いている普通のテーブル席に休憩しに行きました。

開けっ放しの窓から風が入ってきてかなり快適です。そして車窓からは月明かりに照らされたウクライナの田舎の風景が見えてとてもキレイでした。

 

ちなみにこのテーブル席、テーブルを挟んで2人が座れるようになってます。

僕が車窓から異国の風景を眺めてエモい気分に浸っていると、知らないおっちゃんが向かいに座ってきました。

「暑くて寝れねーよな」と声をかけられ、どこから来たのかとか、なんでウクライナに旅行にきたのか、とか色々な会話を交わしました。

さらにおっちゃんは給湯室から紅茶を持ってきてくれて、「まぁちょっと話そうや」みたいな感じで、僕の向かいでくつろぎ始めます。

 

会話の内容はあんまり覚えてないですけど、

僕が「大都市だけじゃなくウクライナの田舎の方にも行きたいな~」と話したら、

ウクライナの田舎はまだまだ貧しいけど、人も町も素晴らしいよ」と言ってくれたのが印象に残ってます。この発言自体は別によく言われるような文言ですが、信じられないくらいボロボロの電車に乗りながら、おっちゃんとの会話を楽しんでる今この瞬間に、まさにその通りだなと感じました。

 

 

おっちゃんとの会話の後、ベットに戻ってめちゃくちゃ質の悪い睡眠をとっているうちに、外が明るくなってきました。

 

朝5時。バキバキの体でLvivの駅に到着。

クルジュ=ナポカからここに来るまで、たった2晩ですがとてもとても長い道のりでした。

 

 

ウクライナに着いてからのことも、そのうち書くかもしれませんし書かないかもしれません。(あんまり特筆することが起こらなかったので)